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量子コンピューターがもたらす未来とは?従来のコンピューターとの違いやメリットを解説

量子コンピューターという言葉を聞いたことがありますか?量子コンピューターは、量子力学の原理を計算に応用したコンピュータで、従来のコンピューターでは解くことができないような複雑な問題を高速に解くことができると言われています。しかし、量子コンピューターはどのようにして動くのでしょうか?また、量子コンピューターが実用化されたら、私たちの生活や社会にどのような影響を与えるのでしょうか?

量子コンピューターとは?

量子コンピューターは、通常のコンピューターとは異なる仕組みで情報を扱います。通常のコンピューターは、情報を0か1の2つの値で表すビットという単位で処理します。例えば、3桁のビットであれば、000, 001, 010, 011, 100, 101, 110, 111の8通りの組み合わせがあります。このように、ビットは排他的な2値のいずれかの状態を持ちます。

一方、量子コンピューターは、情報を0でも1でもある重ね合わせという特殊な状態で表す量子ビットという単位で処理します。重ね合わせとは、0と1の両方の値を一定の確率で持っており、観測するまではどちらかに確定しないという現象です。例えば、3量子ビットであれば、000, 001, ..., 111の8通りだけでなく、それらの重ね合わせも含めて2^3=8通りではなく2^(2^3)=256通りの状態を同時に表せます。このように、量子ビットは非排他的な多値の状態を持ちます。

この重ね合わせを利用することで、量子コンピューターは考えられる限りの経路や答えを同時に計算し、正しい答えを高確率で求めることができます。これにより、通常のコンピューターでは多くの時間や資源が必要な問題も、効率的に解くことが可能になります。

量子コンピューターが解ける問題とは?

量子コンピューターは、従来のコンピューターでは解けないような問題に対して優れた能力を発揮すると期待されています。その代表的な例が暗号解読です。インターネット上で情報を安全にやり取りするためには、暗号化という手法が使われます。暗号化とは、元の情報(平文)を特定のルール(鍵)に従って変換することで、第三者に読めない形(暗号文)にすることです。暗号文を平文に戻す(復号する)ためには、鍵が必要です。

現在広く使われている暗号化方式の一つがRSA暗号です。RSA暗号では、非常に大きな数(200桁以上)を素因数分解することが鍵を見つけることに相当します。しかし、素因数分解は通常のコンピューターでは非常に困難な問題であり、現実的な時間内で解くことができません。そのため、RSA暗号は安全だと考えられています。

しかし、1994年にアメリカの研究者ピーター・ショアが提案したショアのアルゴリズムは、量子コンピューターを使って素因数分解を高速に行うことができることを示しました。ショアのアルゴリズムを実装した量子コンピューターが実現すれば、RSA暗号は破られる可能性があります。これはインターネット上で行われる金融取引や個人情報保護などに大きな影響を与えることになります。

暗号解読だけでなく、量子コンピューターは創薬や材料開発などでも有用だと考えられています。これらの分野では、分子や物質の振る舞いをシミュレートすることが重要ですが、これも通常のコンピューターでは計算量が膨大になってしまいます。しかし、量子コンピューターは自然界の現象をそのまま表現することができるため、より正確かつ効率的にシミュレートすることが可能です。これにより、新しい薬や素材を発見したり最適化したりすることが期待されます。

量子コンピューター開発競争

量子コンピューターは多くの可能性を秘めており、世界中で開発競争が激化しています。その中でも特に注目されている企業がGoogleです。Googleは2019年10月に、「53量子ビット」(qubit)からなる自社開発の量子プロセッサ「Sycamore」を使って、「量子超越性」(quantum supremacy)を達成したと発表しました。「量子超越性」とは、「従来型スーパーコンピュータでは不可能または非現実的な時間(10,000年以上)かかる計算問題」を「200秒以内」 で解くことができたことを意味します。

Googleは2021年5月に、「Quantum AI campus」と呼ばれる新しい施設をカリフォルニア州サンタバーバラ郡に開設しました 。この施設では、「誤り訂正」(error correction) を備えた「誤り訂正可能」(fault-tolerant)な「100万qubit」 の「エラスティック・クラウド・モデル」 の「次世代型量子コンピューター」 を開発することを目指しています。Googleは、2029年までに「誤り訂正可能な量子コンピューター」 を実現するという野心的な計画を発表しており、量子コンピューターのリーダーとしての地位を確立しようとしています。

Googleだけでなく、IBMやマイクロソフトなどの大手IT企業や、インテルやAMDなどの半導体メーカーも量子コンピューターの開発に力を入れています。また、中国や欧州連合(EU)などの国や地域も、量子コンピューターの研究や開発に多額の予算を投入しています。量子コンピューターは、21世紀の科学技術の最前線と言えるでしょう。

量子コンピューターがもたらす未来

量子コンピューターが実用化されたら、私たちの生活や社会にどのような変化が起こるでしょうか?一つは、暗号化技術の革新です。前述したように、量子コンピューターは現在使われている暗号化方式を破ることができる可能性があります。しかし、それと同時に、量子コンピューターは新たな暗号化方式を生み出すこともできます。その一例が「量子暗号」です。量子暗号とは、光の粒子(光子)を使って情報を送受信することで、第三者に傍受されてもそれを検知できるという特徴を持つ暗号化方式です。量子暗号は、量子力学の原理に基づいており、理論上は完全に安全だと言われています。量子暗号はすでに実用化されており 、今後はより高速かつ安定した通信が可能になると期待されています。

もう一つは、人工知能(AI)の進化です。AIは、機械学習や深層学習などの技術を使って、人間の知能を模倣したり超えたりすることを目指す分野です。AIは現在でも多くの分野で活用されており 、画像認識や自然言語処理などのタスクで人間よりも高い性能を示すことがあります。しかし、AIは計算能力に制限されており 、より複雑な問題や大規模なデータを扱うことが困難です。そこで、量子コンピューターが役立ちます。量子コンピューターは、AIに必要な計算を高速かつ効率的に行うことができます。また、量子コンピューターは自然界の現象をそのまま表現することができるため、AIによるシミュレーションや最適化も容易になります。これにより、AIはより高度かつ応用範囲の広い知能を獲得することが期待されます。

まとめ

この記事では、量子コンピューターについて解説しました。量子コンピューターは、従来のコンピューターでは解けないような問題を高速に解くことができると言われており 、暗号解読や創薬など多くの分野で有用だと考えられています。しかし、量子コンピューターはまだ開発途上であり 、課題も多くあります。そのため、世界中で開発競争が激化しており 、GoogleやIBMなどの企業や国家が先頭を切っています。量子コンピューターが実用化されたら 、私たちの生活や社会に大きな変化が起こることでしょう。

参考文献

: [https://www.nature.com/articles/s41586-019-1666-5]