差別とは、特定の集団や属性を理由にして、他者を不当に扱う行為です¹。差別には複数の形態があり、何らかの除外や拒否が含まれます²。差別は、他者の個別具体的な生を理解する回路を遮断し、歪められたカテゴリーをあてはめることで起こります³。差別は、私たちの日常的実践に根ざしており、無批判的に受容することが問題です³。差別を考えることは、他者理解の歪みや偏りを解読し、解体、変革することです³。
しかし、差別は歴史的にも長く、一人ひとりの価値観に基づくものであることから、今も差別が完全にはなくならず、日本でも様々な差別の問題が起こっています。この記事では、日本にはどのような差別問題が存在するのか紹介します。また、国連が採択した持続可能な開発目標(SDGs)という枠組みを用いて、差別をなくすために必要な行動や対策についても考えていきます。
日本にはどんな差別がある?
日本国内に未だにある差別問題は、人権問題に他なりません。それは国際的にも問題になっている性別、いわゆるジェンダーの問題や、子どものいじめ、高齢者の人権、障がい者の人権が挙がります。また、HIV感染者などの人権問題や服役していた人の人権問題なども差別につながっています。さらに日本固有のものとして同和問題や、アイヌ民族の人権問題、外国人の人権問題も差別として問題になっています。
女性の人権問題
日本国憲法に男女の同件や平等、そして普通選挙法において男女共にその選挙権を得てから、70年以上が経ちました。国内の最高法規にさえ、平等が謳われているにも関わらず、未だ家庭や職場、地域社会において、男女の役割分担意識などがあり、社会参加や就職、また収入などの機会において、格差が存在しています。
それに加え、近年は配偶者からの暴力(DV)、セクシャル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、ストーカー、性犯罪などが、女性に対しての人権問題として訴えられています。
世界経済フォーラムにおいて、男女格差の指標となるジェンダー・ギャップ指数が発表されますが、2022年のデータでは日本は総合スコアで0.650でした。このジェンダー・ギャップ指数は0に近いほど完全不平等であり、1に近いほど完全平等を意味していますが、1位はアイスランドで0.908、日本は144カ国中116位とかなり下のランクでした。これは社会的な立場での女性の人権が軽視されており、特に経済や政治分野においては女性の参画がまだまだ行われていないことが分かっています。
男女共にお互いの人権を尊重して責任を分かち合い、性別に関わらず、その個性や能力を十分に発揮できる豊かな社会の実現を目指して、男女共同参画に関する理解を深めること、そしてそれを実践していくことが重要だとされています。
子どもの人権問題
子どもを取り巻く社会環境は時代と共に変化し、その影響が様々なところに出ています。陰湿ないじめや、親などによる虐待の増加、教員などによる体罰、自殺、不登校の問題、学校での暴力行為、国内外の児童買春や児童ポルノの氾濫など、子どもの人権をめぐる問題は深刻です。
子どもは国にとっての将来の財産であり、誰もが平等に権利と教育を受けることができるはずですが、教育が行き届かず子どもの頃から偏見や差別により、同学年や他学年の子どもをいじめる姿もあります。この考え方、価値観が大人になっても根強く残れば、さらなる差別などにつながってしまうことから、子どもを最大限に尊重し、安心して健やかに成長できる社会を構築していくこと、正しく教育を行っていくことが大人の責任として存在します。
高齢者の人権問題
現代は医療の発展や生活環境などの改善から、平均寿命が大幅に伸び、高齢化が急速に進行しています。そのため高齢者の中には社会参加への意欲が高い人も多いですが、高齢であることを理由として社会参加ができない人も存在します。これは年齢による差別に他なりません。
また介護を必要とする高齢者に対して、介護をする側のストレスや疲労から身体的または心理的虐待を加える、家族や親族による無断の財産処分などの問題もあり、高齢者の人権を守ることが現代の日本社会において重要な課題です⁴⁵。
高齢者の人権問題は、国際的にも注目されています。国連では、1982年に第1回高齢化世界会議を開催し、高齢者のための国連原則を採択しました。その後も2002年に第2回高齢化世界会議を開催し、マドリード国際行動計画を採択しました。この計画では、高齢者の人権保障や社会参加、健康や福祉などに関する具体的な方策が示されています。
しかし、現在はまだ高齢者のための国連条約は制定されていません。そのため、2010年から国連では高齢者の人権保障に関する作業部会を設置し、条約制定に向けた議論を進めています。日本でも、高齢期運動団体やNGOなどが条約制定運動に参加し、日本高齢者人権宣言策定に向けて活動しています。
高齢者の人権問題は、私たち自身や家族や友人など身近な人々が将来直面する可能性が高い問題です。また、高齢者の人権保障は、すべての人々の人権保障の水準を引き上げることにもつながります。私たちは、高齢者としても若者としても尊重される社会を目指すべきです。
差別をなくすために必要な行動と対策
差別は、私たち一人ひとりや社会全体が変わることで解消できます。差別をなくすために必要な行動と対策は何でしょうか。
個人レベルでできること
- 差別的な言葉や行動をしないこと
- 差別的な言葉や行動に遭遇したら抗議すること
- 差別的な言葉や行動に遭った人に寄り添うこと
- 差別の原因や影響について学ぶこと
- 差別のない社会を目指す団体や活動に参加すること
社会レベルでできること
- 差別を禁止する法律や条例を制定すること
- 差別を防止する教育や啓発を行うこと
- 差別に対する相談や支援の体制を整えること
- 差別の実態や影響を調査し、公表すること
- 差別に対する監視や検証の仕組みを作ること
まとめ
差別は、人間の尊厳や平等を侵害する行為です。差別は、私たちの日常的実践に根ざしており、無批判的に受容することが問題です。差別を考えることは、他者理解の歪みや偏りを解読し、解体、変革することです。
日本には、性別、子ども、高齢者、障がい者、同和、アイヌ、外国人など様々な差別問題が存在します。これらの差別問題は、国際的にも注目されており、国連などでは差別をなくすための条約や宣言が採択されています。
私たちは、差別をなくすために個人レベルでも社会レベルでも行動しなければなりません。差別のない社会は、すべての人々が自分らしく生きることができる社会です。私たちは、そのような社会を目指して努力しましょう。
出典
¹: 差別 - Wikipedia
²: 差別の形態 - Wikipedia
³: 「差別」って何? | SDGsコンパス
⁴: 3 高齢者の人権問題|東京都総務局人権部 じんけんのとびら
⁵: 高齢者の人権問題|人権問題 基礎知識|一般財団法人 大阪府 ...
: 高齢者の人権保障に関する作業部会(OEWG) | 外務省
: 日本高齢者人権宣言策定に向けて-なぜ、今、人権なのか
: 日本高齢期運動連絡会