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水素エネルギーは本当に安全なのか?カーボンニュートラル社会に向けて知っておきたいこと

水素エネルギーという言葉を聞いたことがありますか?水素は、水からつくることができ、燃焼してもCO2を排出しないエネルギーです。気体、液体、固体などさまざまな状態で貯蔵・輸送が可能で、高いエネルギー効率、低い環境負荷、非常時の利活用が見込まれ、カーボンニュートラル時代において中心的な役割が期待されています¹。

しかし、水素エネルギーは本当に安全なのでしょうか?水素は引火性や爆発性が高く、取り扱いには注意が必要です。また、水素を製造する際には、化石燃料や再生可能エネルギーなどさまざまな資源を利用することができますが、その過程でCO2や他の汚染物質を排出する可能性もあります。さらに、水素を利用するためには、インフラや制度などを含めて大きな変化が必要となります²。

この記事では、水素エネルギーの安全性に関する以下の3つのポイントについて解説します。

  • 水素の取り扱いにおける安全対策
  • 水素の製造方法による環境影響
  • 水素社会の構築に向けた課題と展望

水素の取り扱いにおける安全対策

水素は、空気中で4%から75%の濃度で引火し、18%から59%の濃度で爆発します³。また、水素は非常に軽くて拡散性が高く、漏洩した場合には迅速に空気中に拡散してしまいます。そのため、水素を貯蔵・輸送・利用する際には、火花や静電気などの引火源を避けることや、換気や漏洩検知などの対策を行うことが重要です。

また、水素は無色無臭であり、人間の感覚では検知しにくいです。そのため、水素を扱う場所では、人工的な臭気剤を添加することや、音や光などで警告するシステムを導入することも有効です。

さらに、水素は金属と反応して金属の強度や延性を低下させる「水素脆化」という現象を引き起こす可能性があります。そのため、水素を扱う設備や機器では、耐水素性の高い材料やコーティング技術を用いることが必要です。

水素の製造方法による環境影響

水素は自然界に単体で存在せず、他の物質と結合した状態で存在しています。そのため、水素を製造する際には、他の物質から水素を分離する工程が必要です。この工程では、電気や熱などのエネルギー源や触媒などの補助物質が必要となります。

現在主流となっている水素の製造方法は、「改質法」と呼ばれる方法です。これは、天然ガスや石炭などの化石燃料から水素とCO2を生成する方法です。この方法では、大量のCO2が排出されるだけでなく、化石燃料の枯渇リスクもあります。

一方、「電解法」と呼ばれる方法では、電気分解装置を用いて水から水素と酸素を生成する方法です。この方法では、CO2を排出しませんが、電気分解装置のコストや効率が課題となっています。また、電気分解装置に供給する電力源が化石燃料由来であれば、間接的にCO2を排出することになります。そのため、「再生可能エネルギー」と呼ばれる太陽光や風力などの自然エネルギーから電力を得て水素を製造する方法が望ましいとされています。

その他にも、「バイオマス法」と呼ばれる方法では、生ごみや植物などの有機物から水素を生成する方法です。この方法では、「カーボンニュートラル」と呼ばれるCO2排出量と吸収量のバランスが取れた状態を実現できます。

水素社会の構築に向けた課題と展望

以上のように、水素エネルギーは安全性や環境影響に関してさまざまな課題を抱えています。しかし、それらの課題を解決するために国内外で研究開発が進められており、「水素社会」と呼ばれる未来像へ向けて着実に歩みを進めています。

日本政府は、「グリーン成長戦略」の中で、「2030年代初頭までに世界最先端レベル」、「2050年までに世界最大規模」 の「国際的な供給・需要チェーン」 を確立することを目指しています。

具体的には、

  • 海外から安価で大量にCO2フリー(再生可能エネルギー由来)または低CO2(化石燃料由来) の水素・アンモニア(NH3) を輸入し
  • 国内でも再生可能エネルギーやバイオマス等からCO2フリーまたは低CO2 の水素・アンモニア を製造し
  • 発電所やFCV だけでなく産業分野でも積極的に利用し
  • 世界各国へ技術支援や協力等も行う

という流れです。

このようにして、「カーボンニュートラル社会」 の実現へ向けて貢献していくことが、水素エネルギーの目指すべき方向性です。水素エネルギーは、安全性や環境影響に関してさまざまな課題を抱えていますが、それらを解決するために国内外で研究開発が進められており、「水素社会」と呼ばれる未来像へ向けて着実に歩みを進めています。水素エネルギーは、次世代のエネルギーとして期待されるだけでなく、日本の産業競争力の強化や国際社会への貢献にもつながる可能性があります。水素エネルギーに関心を持ち、その安全性や環境影響について知っておくことは、カーボンニュートラル社会に向けて重要なことです。

関連サイト

出典

: 産業技術総合研究所「水素エネルギーとは?」 https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20230419.html
: 資源エネルギー庁「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/suiso.html
: 日本工業規格 JIS Z 7253:2012「危険有害物質の安全データシート(SDS)及びラベル」