宇宙開発とは、宇宙空間を人間の社会的な営みに役立てるため、あるいは人間の探求心を満たすために、宇宙に各種機器を送り出したり、さらには人間自身が宇宙に出て行くための活動全般をいう⁷。宇宙開発は、科学技術の進歩だけでなく、国際協力や安全保障、産業や教育など様々な分野に影響を与えている。しかし、宇宙開発には多くの費用やリスクが伴うことも事実である。では、宇宙開発は人類の未来にとって必要なのだろうか？この記事では、宇宙開発の歴史と現状、そして将来の展望について紹介し、その意義や課題について考えてみたい。
宇宙開発の歴史と現状
人類が宇宙空間へ進出する構想は、19世紀にはSF作家のジュール・ヴェルヌの小説に描かれた砲弾宇宙旅行⁷などがあったが、実現化を目指した研究としては、1903年にはロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーが液体燃料型多段式ロケットや人工衛星、惑星への殖民など宇宙開発の基礎技術を提言した⁷。アメリカでは1926年にロバート・ゴダードによる液体燃料ロケット打ち上げが成功している⁷。ドイツでは1923年にヘルマン・オーベルトがロケット推進に関する理論を提言し⁷、第二次世界大戦中にはV2ロケットなどが開発された⁷。
第二次世界大戦後には米ソ両国が冷戦状態になり、国家的プロジェクトとして弾道ミサイルや人工衛星など軍事的利用が可能な技術の研究が競われる宇宙開発競争となった⁷。ソ連は1957年10月に人工衛星スプートニク1号⁷、11月には犬を乗せたスプートニク2号⁷に成功し、アメリカに対して技術的優位を見せ付けた。これはアメリカでスプートニク・ショック⁷と呼ばれる衝撃を与えた。アメリカは1958年にNASAを設立し⁷、1月にはジュノーI型で人工衛星エクスプローラー1号⁸を打ち上げた。それから米ソは有人宇宙飛行や月・惑星への探査機着陸など世界初の偉業をことごとく独占した。しかし有人月面着陸ではアメリカのアポロ計画が先行し⁷、1969年7月20日にはアポロ11号が世界初の有人月面着陸⁸に成功した。
その後も米ソはスペースシャトルやミールなど有人飛行計画を進めたが⁸、冷戦終結後は国際協力的な姿勢へと変化し⁸、1998年から2000年代初頭までに国際宇宙ステーション（ISS）⁸が完成した。ISSでは米露以外にも欧州や日本など多くの国々が参加し⁸、2000年11月以来常時6名程度のクルーが滞在し⁸、科学研究や技術試験などを行っている。
一方で新興国も宇宙開発へ参入し始めた。中国は2003年10月15日に神舟5号で世界で3番目（旧ソ連・ロシア・アメリカ合衆国以外では初）となる有人飛行計画を成功させた⁹。インドも2008年10月22日に月探査機チャンドラヤーン1号で初めて月周回軌道へ到達した。また民間企業も商業的利益やイノベーションを目指して活発化しており⁸、スペースX社やブルーオリジン社などが再使用可能なロケットや有人飛行計画を進めている。
宇宙開発の将来展望
現在も多くの国々や組織が様々な目的でさまざまな計画を立てており⁸、今後もさらなる技術革新や探査成果が期待される。主要な計画として以下のようなものがある。
- 月探査：NASAは2024年までに有人月面着陸計画アルテミスを目指しており⁸、ESAやJAXAも協力する予定である。中国も2020年代中頃までに有人月面着陸計画を予定している。
- 火星探査：NASAは2030年代までに有人火星探査計画を目指しており⁸、ESAやJAXAも協力する予定である。中国も2020年代中頃までに無人火星探査計画を予定している。
小惑星探査：JAXAは2020年12月6日に小惑星リュウグウからサンプルリターンした無人探査機「はやぶさ2」 の後継機「はやぶさ3」 を2024年度以降に打ち上げる予定である。NASAも2023年に小惑星ベンヌからサンプルリターンする無人探査機「オシリス・レックス」 を打ち上げている。 - 太陽系外惑星探査：NASAは2021年に太陽系外惑星の大気や生命の可能性を調べる望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」 を打ち上げる予定である。ESAも2026年に太陽系外惑星の大気や生命の可能性を調べる望遠鏡「プラトー」 を打ち上げる予定である。
- 宇宙観測：NASAは2020年に重力波の観測を目的とした衛星「LISAパスファインダー」 を打ち上げた。ESAも2034年に重力波の観測を目的とした衛星「LISA」 を打ち上げる予定である。
- 宇宙産業：スペースX社やブルーオリジン社などは、宇宙旅行や宇宙資源開発などの商業的利用を目指しており、今後も技術開発や価格競争が激化すると予想される。
宇宙開発の意義と課題
以上のように、宇宙開発は人類の知識や技術を拡大し、新たな可能性や価値を創造することができる。宇宙開発は以下のような意義があると言える。
- 科学的知見の向上：宇宙開発によって、地球や太陽系、銀河系、宇宙全体の起源や進化、物理法則や自然現象などに関する科学的知見が向上する。これは人類の存在意義や未来像を探求することにもつながる。
- 技術的革新の促進：宇宙開発によって、ロケットや衛星、探査機などの高度な技術が開発される。これらの技術は地球上でも応用され、通信や気象、防災など様々な分野で社会的貢献を果たす。
- 国際協力と平和の促進：宇宙開発によって、多くの国々や組織が共通の目標や利益を持ち、協力関係を築くことができる。これは国際社会の安定と平和に寄与する。
- 産業や教育の活性化：宇宙開発によって、新たな産業や市場が創出され、経済的な活動が活性化する。また、宇宙開発は多くの人々に夢や希望を与え、教育や文化の向上にも貢献する。
一方で、宇宙開発には以下のような課題もあると言える。
- 費用やリスクの高さ：宇宙開発は非常に高額な費用がかかり、事故や失敗も多い。これは地球上で解決すべき問題に対して資源を奪うことにもなりかねない。
- 環境や安全保障への影響：宇宙開発は地球周辺軌道に多くのスペースデブリ（人工物）を残し、衝突事故や落下事故などの危険性を高める。また、軍事的利用が拡大すれば、新たな紛争や脅威が生じる可能性もある。
- 倫理的・法的な問題：宇宙開発は地球外生命体や資源などに関する倫理的・法的な問題を引き起こす可能性がある。例えば、地球外生命体と接触した場合、どう対処すべきか？地球外資源は誰が所有し利用できるか？などである。
まとめ
この記事では、宇宙開発の歴史と現状、そして将来展望について紹介し、その意義や課題について考えてみた。宇宙開発は人類にとって多くのメリットをもたらす一方で、多くのデメリットも伴う。そのため、今後も科学的・技術的・社会的・政治的・経済的・倫理的・法的な側面から総合的に判断し、持続可能で公正で平和な形で進めていく必要があるだろう。
関連サイト
出典
: Wikipedia: 宇宙開発
: Wikipedia: 宇宙開発計画一覧
: Wikipedia: 神舟5号
: JAXA: はやぶさ3計画