北朝鮮の弾道ミサイル発射予告に岸田首相が強く反発
北朝鮮が「人工衛星」と称する弾道ミサイルを発射すると表明
北朝鮮は5月29日、日本に対して「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射予告を通知した。発射期間は5月31日から6月11日までで、危険区域は朝鮮半島西側2カ所とフィリピン東部1カ所の計3カ所だった。これらの区域はいずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外であるが、南西諸島を含め日本の領域を通過する可能性があるとされる。
北朝鮮はこれまでにも「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射しており、最後に発射したのは2016年2月だった。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙は今月、「軍事偵察衛星1号機」の搭載準備が完了したと報じていた。
岸田首相が「断じて許さず」と非難し、米韓と連携を強調
岸田文雄首相は29日午前、北朝鮮からの通知を受けて「地域や国際社会の平和と安定を脅かすもので断じて許すことはできない」と述べた。「国際法違反で強く非難する。すでに北朝鮮に厳重に抗議した」と話した。視察先の福島県葛尾村で記者団に語った。
首相は、情報収集・分析や国民への情報提供、関係国との連携や不測の事態に備えた態勢整備など3点を関係省庁に指示した。また、浜田靖一防衛相が日本に落下する場合に迎撃を可能とする「破壊措置命令」を自衛隊に出したことも明らかにした。
首相は「米国や韓国と引き続き緊密に連携し、情報収集や警戒監視に全力を挙げる。日本の平和と安全の確保に万全を尽くす」と強調した。
弾道ミサイル技術を用いた発射は安保理決議違反
北朝鮮が「人工衛星」と称するものは、事実上の長距離弾道ミサイルであるとみられる。弾道ミサイル技術を用いた発射は、国連安全保障理事会(安保理)決議違反であり、核兵器開発能力の向上につながる恐れがある。
安保理は2016年3月、北朝鮮が同年1月と2月に核実験とミサイル発射を行ったことを受けて、制裁決議第2270号を採択した。この決議では、「核兵器開発能力向上目的で行われるあらゆる種類の弾道ミサイル技術開発活動」を禁止し、「人工衛星打ち上げ」も含むことを明記している。
また、安保理は2017年9月、北朝鮮が同年7月と8月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を2回発射し、9月に水爆実験を行ったことを受けて、制裁決議第2375号を採択した。この決議では、「北朝鮮が核兵器やその他大量破壊兵器及びその配備手段開発計画から完全かつ不可逆的かつ検証可能な方法で放棄するまで」制裁措置を維持することを確認している。
日本政府はどう対応すべきか
北朝鮮が弾道ミサイル発射予告を行ったことは、日本政府にとって深刻な挑発行為である。日本政府は自国民の生命や財産を守るために迎撃体制や情報共有などを強化しなければならない。
しかし、それだけでは不十分である。北朝鮮が核・ミサイル開発計画から完全かつ不可逆的かつ検証可能な方法で放棄するよう働きかける必要がある。そのためには、米国や韓国など関係国と連携し、対話と圧力の両面からアプローチすることが重要である。
また、日本政府は拉致問題解決へ向けても努力しなければならない。拉致被害者やその家族は長年苦しみ続けており、時間がない状況である。北朝鮮が核・ミサイル開発計画から放棄することが拉致問題解決への前提条件ではなく、拉致問題解決こそが日本政府の最優先課題であることを明確に示す必要がある。
まとめ
北朝鮮が弾道ミサイル発射予告を行ったことは、日本政府や国際社会に対する挑戦的な行動であり、断固として非難されなければならない。日本政府は自国民の安全に備えるとともに、北朝鮮に核・ミサイル開発計画から放棄するよう強く求めるべきである。また、拉致問題解決への取り組みも怠ってはならない。日本政府は米国や韓国など関係国と連携し、対話と圧力の両面から北朝鮮に働きかけることが重要である。